先日ツイッター上で芹香さんとやり取りさせていただいた『そもそもモーニング版の御手洗さんがなんでああなってるんだろう、というところから始まる島田先生にとっての『御手洗潔』像そのものがずっと前からモーニング／ドラマ版の御手洗潔にシフトしてたんだけど、小説（しかも石岡君なり、語り手の主観の入った一人称）だからこそ、その変化に読者は気付かず、二次元／三次元化で可視化した』という話。
この辺も文章でまとめようかと思ったのですが、そのまま貼った方が分かりやすい気がしたので申し訳ないですがツイッター直貼りします。
コミカライズ版もなんだけどなんでキヨシあんなわかりにくい性格になってるんだろう。変人要素を除いただけじゃああならないよなあ。そういう意味で間にコミカライズが入ってるのは大きい。最初からあれなら今頃原作ファン大炎上だわ。
— みぶな (@MibunaY) March 8, 2015
@MibunaY ですよね、コミカライズ咀嚼してる読者と原作（特に初期）で留まってる派でドラマの感想は随分……というか180度違うと思います。その辺のことをずーっと考えててどう書こうかなあって思ってるところのドラマ解釈で、ちょっとヒントが見えた気がしました。
— 芹香（ねむるさかな） (@aquamensis) March 8, 2015
@aquamensis 原作の御手洗さんのわかりやすい魅力のような部分がばさっとわかりにくくなってる感じなんですよね。コミカライズ挟んでないとどうしてこうなったかわからない。 お前の立ち位置は何だって感じですが、原作好きの方でも御手洗さん好きと石岡君好きでだいぶ見方違うのかなと。
— みぶな (@MibunaY) March 8, 2015
@MibunaY 結局、30年掛けて変化してきた、作者がこうさせたい、見て欲しい「理想の御手洗」と、「読者が観たい御手洗」とのギャップがあり過ぎるのが原因かな―と思います。初期のインパクトがそれだけ大きかったということで。
— 芹香（ねむるさかな） (@aquamensis) March 9, 2015
@aquamensis かといって科学者のキヨシ・ミタライと、コミカライズ・ドラマの『ミタライ』はまた全然違うキャラクターになってるのが面白いんですが、先生の中では全部同じ御手洗さんなんでしょうかね。
— みぶな (@MibunaY) March 9, 2015
@MibunaY 原さんは最初に何をお読みになったんでしょうね？ いきなり「糸ノコ」だったのかな。『占星術』から入ってれば、殆ど出番のない「糸ノコ」にしてもちょっと違ったのかも……と思ったり、「糸ノコ」最初に読めば、そりゃ大人しくもなるわ……なのか。
— 芹香（ねむるさかな） (@aquamensis) March 9, 2015
@aquamensis （今たまたまコミックス読んでたんですが）『糸ノコ』だけだと全然御手洗像が掴めないので、さすがに何作か読まれたんだとは思うんですが…でも『糸ノコ』と作者による「御手洗潔とは」のレクチャーだけという可能性もあるのかもと思うとちょっと愕然と。
— みぶな (@MibunaY) March 9, 2015
@MibunaY コミカライズの話があるまで〈御手洗シリーズ〉知らなかったって仰ってますしねえ。まさかの「糸ノコ」のみで始まった企画だったのかも……次で「傘」読んでたとしてもやっぱり大人しめですし。もしかして数作書いて初期作読んだ→ギャップを修正出来ずの終了なのかも……（愕然）。
— 芹香（ねむるさかな） (@aquamensis) March 9, 2015
@aquamensis 『糸ノコ』とそれ以外の作りこみのギャップを考えると、糸ノコだけの企画説に信憑性が出ていやーんな感じします（笑）『糸ノコ』の次に変人薄めの『傘～』じゃなく初期作をやっていればもっと違うキャラになったんじゃないかと…やっぱりコミカライズ順に読んだのかも（愕然）
— みぶな (@MibunaY) March 9, 2015
@MibunaY うーん、掲載時の作者コメントを見ると、1作で終わりってことはないとは思うんですが、ロゴが途中で変わるとかの行き当たりばったり展開を考えると、やっぱり初期作飛ばして執筆順だったのかもしれないですね……。ここにきて謎が解けた……かも……（笑うしかない）。
— 芹香（ねむるさかな） (@aquamensis) March 9, 2015
@aquamensis 少なくとも反応がよければ続けることは前提だったとは思います。んで『糸ノコ』だけだと演説もしてるしそれなりに変人にもシフトできたと思うんですが…設定的には現代に近いし先生も自信のある作品なのはわかるんですが、何で２作目が『傘～』だったのかな（疑問無限ループ）
— みぶな (@MibunaY) March 9, 2015
ドラマ化の前、コミカライズが決定してからずーっと思ってるんですけど、作者と読者の中で「御手洗潔の魅力」を挙げてくと、真逆な人物像が出来上がる気がする。
— 芹香（ねむるさかな） (@aquamensis) March 9, 2015
@aquamensis 朝の話とも被るんですが、先生にとっての御手洗さんはずっとああいうコミカライズやドラマの人物像で、あくまで石岡君の目を通してはじめて原作の御手洗さんになるということなんですかね。そこの読者と作者のギャップが小説ではない媒体でようやく可視化されたということかも
— みぶな (@MibunaY) March 9, 2015
@MibunaY んんんー、作った当初は「こんな友達いたらいいなー」だったそうなので、「人目も気にせず我が道を往くタイプ」だったんだろうと思うんですよ。だけど、受け手が「奇矯な行動ばかり」注目するので（そんなこともないはずだけど）、もっとクール部分を強調したいのかなあみたい、な。
— 芹香（ねむるさかな） (@aquamensis) March 9, 2015
@aquamensis ああ、初期は違いますね確かに。こう、先生の中で御手洗さんの設定が固まっていく過程で作中の御手洗さんとズレてきて、でも読者にはそのズレが見えなかった。先生が考える「これが御手洗です！」っていうのが先生がいくら語ってもまた設定盛ってくらいに思ってたんですが。
— みぶな (@MibunaY) March 9, 2015
@aquamensis 原作の知識がない漫画家さんが設定固まった後のお話を「先生が考える御手洗」で漫画にしたからこそ、ああいうキャラになったんだなーと。
— みぶな (@MibunaY) March 9, 2015
コミカライズも（少なくとも初期は）ドラマも先生がどっぷり噛んでて、実写化発表後に玉木さんに直接「御手洗潔とはどういうキャラなのかレクチャーした」的なことを仰っていて、その上でドラマもコミカライズを踏まえたキャラクターになっていたわけで、コミカライズの御手洗潔が突然変異なのではなく、先生の中ではずっと御手洗さんはああいうキャラクターであったと。そして原さんがもっと原作大好きです！っていう作家さんだったら原作好きの方が連想するような御手洗さんになっていたんでしょうが、そうじゃなかったからこそ「先生の中の正しい御手洗潔」としてあの御手洗さんが生まれたという可能性（そもそもとして原作に沿ったコミカライズであれば企画自体が成り立たなかったかもしれない）。
でも原作では今更読者には受け入れられないことは理解してるからこそ、コミカライズやドラマでは『御手洗潔』ではなくわざわざ『ミタライ』として、原作の御手洗潔でもキヨシ・ミタライとも別の『御手洗潔』を先生自らが作ろうとしてるのか、ということを今になって思いました。本当に今更である。
しかしあの御手洗さんにはコメディ要素よりも人情味のあるお話が本当に似合わなくて、ドラマでも一人で関係者や犯人と対峙する場面が浮いて間延びしてるし（あのキャラなら原作通り犯人との直接のやりとりは刑事に任せるべきだった）、コミカライズでも『数字錠』だけ異様に浮いてるように感じるので実写化を希望してる方が結構いらっしゃるけど、申し訳ないが全然面白くないと思う。同様に実写化するなら『セント・ニコラス～』を希望してたけどこのままだと全然似合わなさそうなので撤回します。
ドラマの石岡君は石岡和己要素のうちの「常識人」「過剰なまでの腰の低さ」「御手洗の言動行動に対するフォロー」が一切なくて、むしろ御手洗さんと同様に失礼だったり、御手洗さんを窘めるんじゃなくて御手洗さんが悪くないという逆方向のフォローをしてたりと石岡和己としてはおかしいんですが、原作では隠れがちな、御手洗さんほどではないにしても石岡君も常識から外れたキャラクターである、というところをうまいこと掬って、「わかりやすい変人」ではない御手洗潔に対し「普通っぽく見えるけどやっぱりなんか変」という浮世離れ感を出すことで、相棒としては成り立たせているとは思いました（まあでも刑事さん泣かせたののフォローはしろよ…）。コミカライズだと原作の石岡君をなぞってはいるのですが御手洗さんの改変に合わせて練られていない。そもそもこの人はどういう立ち位置なんだ、というところが原作の石岡君を踏まえないと分らないし。…とここまで書いて、原作における石岡和己の人物像も非常に相対的だなあとやっぱり今更です。
ここまで書いた直後に、ようやく『新訳』という単語に思い至る。つまり『ミタライ』ははじめから『新訳・御手洗シリーズ』をやろうとしている。だからコミカライズもドラマも原作に忠実なマンガ化・ドラマ化でではないし、コミカライズはストーリーこそ原作そのまま（糸ノコは違うが）だけど、ドラマに至っては完全に新訳の解釈で再構成されている。何度も原作路線でマンガ化なりドラマ化なりされた上での新規路線ならわかりやすいんだけど、そうではなく原作からいきなりポーンと飛んでしまったので見えなかったんだ。
（唐突に、『宇宙一の無責任男』シリーズ（『無責任艦長タイラー』）で、原作は主人公の見た目は30近い冴えないおっさんだったのにアニメ化で20そこそこの美形に改変されたり、声優さんも変更したりと作者が最初は色々文句を言っていたのが思ったより好評で、最終的に作者自らがアニメ設定で焼き直したら女好き設定の美形キャラがなぜかホモになってたのを思い出した）
『ミタライ』の試みは試みとして面白いとは思うんですが、キャラクターだけじゃなくてストーリーも原作そのままでなく相当練りこまないといけないし今回のように後半ただのサスペンスじゃ無理があるし。『イカロス』は合うと思うんだけどやっぱり『数字錠』はなあ…（無限ループ）
全然まとまってないけどとりあえず一旦締める。
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ぽちぽちありがとうございました。