HAPPY BIRTHDAY！

僕を見つけたその瞳が、信じられないものを見たように大きく見開かれる。
そんなに驚くならもっと急いで来ればいいのに、まるで焦らすようにゆっくりと向かってくるから、僕も何も言わずにただ笑いかけてみた。
ようやく腕を伸ばせば届くほどの距離まで近づくと、ぶつぶつとどこかの国の言葉で何かを唸っているのがわかった。
ゆっくりと右手が持ち上がり、指先だけが頬に触れた。
―ああ、冷えている。
一瞬だけ触れ、驚いたように離れる。何度か瞬きを繰り返しながらおずおずと掌全体が頬に触れる。
頬に、額に、首筋に、髪に。確かめるように。
「…石岡君？」
ようやく名前を呼ばれる。
「うん」
ひとしきり撫でられたと思ったら、今度はぺちぺちと両手で頬を挟み込むようにたたかれる。
「石岡君？」
「なんだよ」
「……なんてことだ。本物じゃないか。夢じゃないぞ」
「そういうことはまず自分の体で確かめるものじゃないか？」
抱きしめてくるよりも先に首筋に腕を回してやった。 途端に包まれる体温を懐かしいと感じて、なんだかとっても癪に障った。

別に君に会いに来たんじゃない。
まあ、ほんの少しくらいは、もしかしたら会うかもしれないなとは思ったけど。

別に君に会えなくたってよかった。
まあ、僕が来てたことを知った時に、君はちょっとくらい傷つくだろうからそれでいいとは思ったけど。

僕が折れたんじゃない。
別に、僕は、ただ。

「石岡君」
「うん」

もう少し他に言うべき言葉があるだろうに馬鹿みたいに僕の名前しか言わないから、僕も色々言いたい言葉があったはずなのに馬鹿みたいにこれしか言えないじゃないか。

―僕は、ただ君からもらうべきものを受け取りに来ただけなんだ。

だから君が先に折れるまで、もう少しだけこの腕の中にいてやろうと思った。

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おめでとー！

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